Column

コラム

所感と雑感

CMと坂道

日々流れるCMを見ながら、ふと「幸せなひと時を訴求するCMで、坂道がたびたび出てくるのはなぜだろう?」と思いました。しかも、たいていはスーパーの袋にたくさん食材が入っているのを重そうに持ちながら、あるいは疲れて寝てしまった子どもをおんぶしながら、など、坂道を使うにはなかなか大変なシチュエーションであることが多いと思っています。

おそらく、これは暮らしの中の大変さや苦労を視覚的に表しやすいからだと考えています。そのうえで、その中に息づく、もしくはその先にたたずむ「幸せ」を引き立たせたいと、CMの作り手は企んでいるのでしょう。

・お酒のCMなら、夏の夕暮れ、タレントが額に汗を浮かべながらたくさんの食材を抱えて坂道をのぼるシーン→家でおいしいお酒で晩酌するシーンへの転換

・テーマパークのCMなら、両手に子どもの荷物やお土産を持ちながら坂を上る親と、その背中ですやすやと眠る子ども→子どもがその日の出来事を寝言でつぶやき、親がにっこりするシーンへの転換

・住宅のCMなら、冬の夕暮れ、家族で坂道を上るなか、母親もしくは父親だけが歩みを遅くして、坂の上から下の町の景色を振り返り感傷に浸る→少し先で家族のもとに小走りで追いつき、明かりの灯った家へ入っていくシーンへの転換

一方で、「その環境に住んでいたら電動自転車や車で移動するのでは?」とも思います。ウェットなCMを作りたいがために、実際の生活からあまりにもかけ離れすぎている、理想だけが先走っているCMは共感を生むことができません。このあたりのさじ加減をうまく使いこなせるかが、CMプランナーやコピーライターの仕事のひとつだと考えています。